Episode 03

「味わい方」が変わってもそこにある、覚悟と不安とエトセトラ

2025-10-06 · 00:44:14
「味わい方」が変わってもそこにある、覚悟と不安とエトセトラ
「お前が始めた物語だろ」プレイリストの意図コンテンツと自己は不可分だった「推し」とは距離感が一定かつて存在した音楽鑑賞という儀式「音楽様」のBGM化好きなものからの逃れられなさ個性はつい出ちゃうもの味わって真似をすることが創造への一歩「これでいく」と決める覚悟自分自身を投げ込んでつくるときの不安でもやるしかないのであるアベフトシのカッティングフリー音源の曲紹介やろう

音楽の味わい方が、コンポの前に正座する儀式から、日常の後ろに流れる BGM へと変わった。同じことが「作る」ことにも起きている。描くかと腹を決めなくても、欲しいものがポンと出てくる。それでも、誰かの作ったものを深く味わうことが作ることへの一歩になり、うまくいくかわからないまま前に進む覚悟が創造の芯に残る。メタクリラジオ第3回は、ハードディスクの4万曲から始めて、テクノロジーが変えたものと変えられなかったものを、Opi とタムカイが確かめていく回だった。

この回の核心

味わうことと作ることは表裏で、味わい方の解像度が上がると、作るときや選ぶときの感性が変わる。ベースだけを追って聴く、カーニングが見えてくる。そうやって深く味わった経験が、作り手としての憧れと目標になる。一方で、作ることそのものは神聖さを失い、気軽なものになった。二人はそれを否定しない。誰だって真似から始める。ただ、答えが見えているものを作る安心と、自分を投げ込んで作る不安のあいだに、覚悟という一線がある。味わい方がどう変わっても、そこだけは変わらずに残っている。

話の流れ

話は Opi の iTunes ライブラリから始まる。ジギーからハノイロックス、ローリングストーンズへ遡る影響の連鎖が「一つの体系的な知識としてハードディスクには入ってた」と Opi が言うと、タムカイは「実はあの糸はハードディスクには入ってなかったじゃないですか」と返した。糸を可視化するのは持ち主の語りで、Opi が何百と作ったプレイリストや、タムカイの取り込み日付プレイリストがその糸だった。

そこから聴き方の変遷へ進む。Opi はかつての鑑賞を「コンポ様の前で、なんだったら正座をして」聴く儀式と呼び、ウォークマン以降は「音楽様は俺を盛り上げるための道具になった」と言い切る。タムカイはこれを作ることに重ねた。チラシに絵がいるとき「『描くか!』とかってなくて、もうなんかこんなのが欲しいポンって出てくる世界になった」と。

味わう技法の話では、Opi がベースラインだけ、ドラムだけを聴くと「全然味わいが違う」と語り、アベフトシのカッティングを例に挙げた。タムカイは Eight Jam の丸サ進行解説のように、門外漢に味わい方を教えてくれる人が増えてほしいと言い、Opi は「飲み会のネタとしてはつまんない」と難しさを添える。

大里Pがチャットで「マネから入ってオリジナルにはいかないということですね」と投げると、タムカイは「人間誰だってマネからしかいかないと思う」と応じ、Opi は若いディレクターに「個性を出そうとなんかしなくていいよ」と伝えていると明かした。

終盤は覚悟と不安の話になる。Opi は自分を投げ込んで作るものは良いか悪いかその時点ではわからず、「でも俺はやるのだ」と前に進むしかないと語る。タムカイは3日前に「『天才だ俺』っつってやって、一晩寝て、ちょっと人に見せて」凹んだばかりで、それでもまだ作る人でありたいと返した。

創造性の構造 27 でいえば

01. 観察と解像度 は、ベースだけを聴く、カーニングが見えてくるという味わい方の深まりそのものにあたる。解像度が上がると、同じ曲や同じ紙面がまったく別の味わいを持ち始める。

16. ネガティブ・ケイパビリティ は、良いものになるかわからないまま前に進む覚悟の話と重なる。不安を消さずに抱えたまま作り続けることが、二人の言う作る人であり続ける条件になっている。

タムカイの言葉を借りれば、「誰かが創造したものをしっかりと味わうことが創造への一歩になっていく」。今日ひとつ、いつもと違う聴き方で何かを味わってみる。そこから作ることが始まる。

この記事は収録記録から起こした下書きです。二人の確認を経て更新されます。