Episode 20

「エラー」と技術と愛嬌と

2026-02-09 · 00:52:40
「エラー」と技術と愛嬌と
車の鍵を忘れるデジタルキーと機種変更の罠しおりがあれば焦らない京急のポスター「座る、を選ぶ」の衝撃当たり前のじわじわ感大型イベントでの忘れ物紛失時の不安と「iPhoneを探す」歩きMacでバイブコーディングAIをパワハラで動かすスラッシュコマンドによるエージェント化車輪の再発明とパラダイムシフトフォールバックが優秀すぎる弊害二軍AIがいつの間にかレギュラーに全部は預けきれない人間関係愛嬌のあるエラーを目指して

第20回のテーマは「エラー」。前回までのノイズが本来の目的の外側からやってくるものだったのに対し、エラーは当事者の想定や意図を裏切るものとして立ち上がる。忘れた車の鍵、会場に置いてきた財布、AIが勝手に用意するフォールバック。それらを排除するのではなく、内包したまま関係を作っていく。タムカイが「エラーがあることを内包したまま、いろんな関係を作っていくっていう話でしたかね」とまとめ、Opiが「僕のが愛嬌のあるエラーを目指していて」と返した、その着地点がこの回の核になる。

この回の核心

エラーは失敗の記録というより、その人の意図の輪郭を映す鏡として働く。何をエラーと感じるかは人によって違い、Opiの言葉では「自分にとって何がエラーか」でシステム側の環境が変わっていく時代に入っている。だからこそ、完璧なシステムを目指すより、エラーが起きたときにどう振る舞うかを先に設計しておく方が効く。しおりがあれば焦らない。フォールバックが優秀すぎれば本来の道を忘れる。AIに全部は預けきれないが、それでも一緒にやる。その態度は、人と人の関係にもそのまま通じていく。

話の流れ

始まりはOpiの「あの鍵がさ、ねえんだわ。」だった。名古屋への車旅行、三浦海岸駅に1分巻きで着いたのに物理キーがない。デジタルキーは機種変更でセットアップが振り出しに戻り、再設定には忘れたはずの物理キーが要る。それでもOpiは「焦りは実はしてないのよ。それはね、細かく作ったしおりがあったから」と言い、前回語った旅のしおりが立て直しの道具として働くことを実演してみせた。鍵を取りに向かった京急横浜駅のトイレで「座る、を選ぶ。」というポスターにじわじわきて、鍵のショックから一人で抜けていく。

タムカイの忘れ物は、テックガーラ名古屋で会場に置いてきた財布のポーチ。写真付きで「ありましたよ」と連絡が来ただけで安心して、あんかけスパを食べた。Opiは「状態としては変わってないんだけど、不安感みたいなものがこう取れてるか取れてないかでずいぶん違うよね」と、状態と認知のずれを指摘する。

後半はバイブコーディングへ。名古屋で歩きながらMacを叩くOpiの手元では、yを押すだけで次に進む自動化された手順が走っていた。全部を自然言語で説明していた段階からドキュメントを読ませるスラッシュコマンドに至った経緯を、Opiは「パワハラの末にそうなった」と笑う。タムカイは「ねっとりと」語りかける自分との違いに、AIへの振る舞いが知っている人への振る舞いに似ていく構造を見出した。そこからベストプラクティスが「マイベストプラクティス」に溶ける話、「100回リトライしようが200回リトライしようが別に疲れねえし」というAI時代の作り方、「気がついたら二軍選手がもうなんかレギュラーになってた」というフォールバックの罠へと広がっていく。最後はタムカイの「全部は預けきれないけど、でもやっぱり一緒にやるっていうのは。でも人間との関係もそうですよね」で、AIとの関係論が人間関係論に重なった。エラーを隠さず、愛嬌ごと抱えたまま進む。それがこの回が手渡す態度になる。

創造性の構造 27 でいえば

03. ノイズの受容 がこの回の土台になる。外側から来るノイズを受け入れる話が、今回は自分の意図を裏切るエラーを内包する話へと一段進んだ。

25. 暗黙知の形式化 はスラッシュコマンドの話そのもの。同じ説明を繰り返す苛立ちが手順として書き出され、yひとつで動く形に結晶していった。

11. プロトタイピング は、AIのコストが下がったことで、たくさん作って選ぶ戦略や決めずに作り始めるやり方が成立するという後半の議論に重なる。

この記事は収録記録から起こした下書きです。二人の確認を経て更新されます。