パーパスは、世の中のかっこいい言葉を借りてくるものではなく、自分の中にすでにあるものを彫り出すものだ。メタクリラジオ第10回は、タムカイのワークショップ「パーパスカービング」を番組の裏方である大里Pに実施し、その結果をもとに語り合った回。そこから見えてきたのは、人生の振り返り方の設計、劇的な原体験がなくても誰にでもある「拡張体験」、そして名前をつけたり「面白い」と気づいたりすること自体が創造性だという考えだった。
この回の核心
パーパスカービングの名前は、ミケランジェロから来ている。タムカイの父親は彫刻家で、「彫刻家っていうのは天使を作るんじゃなくて、石の中にある天使を自由にすること、それが仕事なんだ」という言葉と組み合わせて名づけた。存在意義は外から引っ付けてきた言葉ではなく、大事にしているものや好きなことの中に埋まっている。だから掘り出す。
道具立ては、折れ線グラフではなくキーワード式の振り返りだ。折れ線で人生を描くと、合格も就職も結婚も子供の誕生も順位をつけなければならず、マイナスの出来事を書かないと隠した気になってしまう。そこで好きだったことやハマったことを、0歳から10歳、11歳から20歳、21歳から今までの三つの枠でキーワードとして書いてもらう。「最近のことしか書いてこねえな問題」を避けつつ、ポロッと出た言葉が聞き手の糸口になる。
もう一つの軸が「拡張体験」だ。死をさまよったとか、劇的な話を語る「原体験マウント」をやりすぎると、自分には何もないという人が生まれる。代わりにタムカイが使うのは、自分の価値観が広がった瞬間。朝はパンの家で育った子が、友達の家で朝ごはんにご飯が出て戸惑う。それで十分だという。
話の流れ
発端は前回のエンディングで出た「僕らは大里Pのことを何にも知らない」という一言。番組で初めて事前打ち合わせをし、大里Pに振り返りとインタビューを行った。浮かび上がったのは兄弟関係と、キャリアの節目で一番大変そうなところを選んできたこと。Opiが「マゾい」と呼ぶその選択に、大里Pはチャットで「難しいイコール面白いだと思って書いてました」と返してくる。
Opiはスピッツの「名前をつけてやる」を引き、名前をつけた瞬間にもやもやしたものが形になって現れると語った。この番組も、大里Pが「面白そうですよね、それ」と言ってしまったから始まっている。タムカイは子供の名づけで感じた責任の重さを重ねた。
後半はOpi自身の告白になる。ロジカルに見えるけれど、実は直感でゴールに着いてから、他人を巻き込むために道を作っている。大里Pのチャットにあった「直感でたどり着いた後に道を舗装する」という言葉を、Opiはその場で「今後使わせていただきます」と受け取った。ネイキッド時代、村松の一言から「お花×テクノロジー」を組み立てたのも同じ動きだった。二人はこの回を、編集者を自認する大里Pが事業会社で変容していくのを編集後記で追う、裏テーマの始まりとして楽しんでいる。
創造性の構造 27 でいえば
01. 観察と解像度 に近いのが、この回で立ち上がった「気づける創造性」。「ありますね」「面白そうですよね」の一言で周囲が固まっていく力は、作る力と並ぶもう一つの極になる。
25. 暗黙知の形式化 は、名前をつけるともやもやが形になる話と、自分の中の大事なものを掘り出すパーパスカービングそのものにあたる。
02. 異化効果 は拡張体験と重なる。朝ごはんにご飯が出ただけで、自分の常識が数ある一つにすぎないと知る。
天使は最初から石の中にいて、劇的な物語がなくても、誰の石の中にもいる。

